IV

 賢治は薫の祖父母の家にいた。そこには数人の黒いスーツを着た男たち、浮浪者然とした薄汚れた男、薫の祖母、そしてまだ少年の薫がいた。
 祖母は下をむき、男たちは厳しい眼で薫をにらむ。薫は泣いていた。賢治は部屋の入口に立ち、ただ黙ってそれを見ていることしかできない。
 黒いスーツの男たちは、その身体つきのよさや雰囲気から考えると、役人かなにかのようだ。祖母は時折、「悪かことばしたらいかんよ……」とだけくりかえす。
 泣いていた薫は顔を上げ賢治を見た。その泣きはらした顔は賢治に助けを求めていた。かつて薫と交わした友達の約束が賢治のあたまをよぎる。賢治はこんな小さな子どもの生に慄然(りつぜん)としながら、眼をそらした。

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