III

 薫の大叔父は夢のなかで薫を犯した。そのような呪術的行為が果たして可能なのかはわからない。
 大学を退学してから祖母の家を訪ねたとき(祖父はもう他界していた)、薫は古いアルバムにあった曾祖父母の写真を見た。田畑を背景に写っている曾祖母とならんだ曾祖父の姿を見たとき、薫はその初老の男になにか自分と同じものを感じた。そのとき薫はすでに精神科に通院していた。
 記憶の前後ははっきりしないが、薫が宮古島に行ったのもその頃だ。薫は祖母に神だありについて訊いたが、祖母は「知らん、あっちの言葉やろ?」と言うだけだった。神だありという言葉は、薫は本などで読み以前から知っていた。
 最初のエクスタシーになった後も、薫は祖母の家に行き「神さんにとりつかれた」と、どこか自嘲的(じちょうてき)に告げたが、祖母はそれを否定しようとした。「昔はようあったとやろ?」と言ってみても、祖母のような老人に似つかわしくない、どこか神学めいた言葉をもらして薫を説得するのだった。
「神は、こう、世界ば……あらしむっと……」

広告を非表示にする