「忘れてるんだよ」
 これは薫が路上で倒れ救急車で病院に運ばれ、寝かせられていたベッドの上で叫んでいたとき、薫を取り押さえていた看護師の誰かが言った言葉だ。
 神だありと前後して、薫のあたまに湧いてくる記憶。さながら夢と現実の境(さかい)の出来事のようなそれは、薫を翻弄(ほんろう)する。