はじめに浮かびあがってきたのは強姦の記憶だ。薫が子どもの頃、家族と母方の祖父母の家に行ったとき、大叔父、祖父の弟に犯された。聡(さと)かった薫が皆の前で大叔父を言い負かしたからだ。ただその夜、家族も一緒に寝ていた部屋のなかで、そうしたことがほんとうにできたのかはわからない。しかし後年、めったに祖父母の家に泊まることのなかった大叔父が、なぜか一泊した日があったことを、祖母は憶えていた。