最初のエクスタシーから数カ月後、大学を休学していた薫は沖縄宮古島のユタのもとを訪れている。ユタとは沖縄などの民間の巫者(シャーマン)のことだ。ユタは薫に「神だあり」だと言った。神だありとは巫者が成巫(せいふ)するときに通過する巫病(ふびょう)だ。
「世界が消えた」と言った後、精神科への入退院をくりかえしていた頃、薫は佐賀から福岡や東京へ行き、そこで奇異なふるまいをし、救急車で運ばれたり、警察に連れて行かれたりした。神だありとはそうしたことをいうそうだ。
 そしてもう一つ、ユタは興味深いことを言った。「女の人が見える」と。誰か身内に若くして死んだ女性の心残りがある。後に必要があり家族の戸籍を調べていたとき、薫の父方の祖父の妹が、十代で死んでいたことがわかった。

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