読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

はじめに

 私が河瀬由子を知ったのは、今から数年前のことだ。その頃河瀬はエイトソフトという創作サークルに参加し、アドベンチャーゲームのシナリオを書く予定だった。しかしサークル主宰者の健康の悪化などにより、その話を構想から先に進めることができないでいたようだ。

 くわえて河瀬自身の眼の状態もあまりよくなかった。河瀬はそのシナリオのメモを数冊のノートにまとめており、眼の疾病で入院していた河瀬を見舞ったとき、私にそれらのノートを見せてくれた。

 ノートに書かれている泉薫(いずみかおる)という男は、河瀬の幼なじみをモデルにしているという。その泉薫を主人公のひとりにしたアドベンチャーゲームを企画していたが、それが無理のようなので、はじめ考えていたように小説にしようと思っている、と河瀬は言っていた。

 河瀬の考えていたその小説を私が書くことになったのは、それから後の河瀬の急逝のためだ。もともと俳句ばかりつくっている自分に、小説として形のまとまったものを書くのは難しい。しかしやらなければいけない。

 思えば河瀬と私がはじめて知り合ったのは、インターネットの俳句投稿サイトであった。このつたない序文の最後に河瀬の秀句を掲げておくことは、これからの私の航海への護符となるだろう。

 

 幼い日の霊を求めよ言葉たち